Chants Of Sennaar、クリア。
プレイ時間11時間半。ややネタバレを含む内容かも。
本作はRUNDISC開発のアドベンチャーゲーム。塔の最下層で目覚めた主人公は上階を目指しますが、そこで出会う住民たちは知らない言葉を使っていてコミュニケーションが取れません。なんとか解読して先に進みましょう、というゲーム。こういう解読ゲーム(?)はこれまで何本かやりましたが、本作はぶっちぎりで品質がいいしゲームとしても面白いです。
文字はオリジナルの象形文字になっていて、最初は当然全く分かりませんが、情報から共通項を探して意味を類推するうち何となく「これは大体『行く』的な意味なのかなー」という事が分かってきます。そうやって想定する意味を埋めていく内に複数の文字に共通の部首があることに気付き「あーこの形が人間なのか」と分かるとまた一気に解読が進みます。
また主人公が頻繁に取り出すノートの空欄に適切な文字を入れるとその文字の「正解」が表示され、正解が揃うと「あなた/探す/私」→「見つけてみなよ!」のように住民の言葉がはっきり分かるようになります。このようにして解読を進め、話や世界観が分かって住民ともコミュニケーションが取れるようになり、晴れて上階へ進んだら住んでる人は違うし雰囲気も異なり、勿論言語も全く違う物になってる…。というところまでが1サイクル。
本作の素晴らしいところは色々ありますが、まずバランス調整が素晴らしい。文字はオリジナルなので既存知識からの類推は難しく、しかしゲーム内のヒント出しが上手いので「気付きの快感」がずっと続きます。適度に「正解」が出るのも上手くて、この手のゲームにありがちな、確信が持てない単語を疑い続けたり、ずーっと後になって「あの文字の解釈が違ってた」みたいなことは起こりません。一言語の単語はそれほど多くなく文法も単純である一方で、複数の言語で文法や記述ルールが全く違うのも素晴らしく、小規模なゲームですが非常に考え抜いて作られたことが伺えます。
階を上がると全く違う世界になっちゃうの既視感あるなと思ったら、GBのSaGaだわ。階層間が分断されているのもそうで、言語が違うから会話も成り立たないし、話を聞いてる内にお互いを誤解していることも分かってきます。そうして主人公が各言語を習得していった先で行うのが言語間の翻訳というのがまたゲーム的にもシナリオ的にも素晴らしい。
遊んでいての不満は結構移動距離があるのにダッシュが無いことと、「下水」のマップが異様に分かりにくいくらいかな。ゲームとしては難易度低めですが、恐らくシナリオを語ることがメインで、完全に行き詰ったりしないように難易度設定してると思う。オチはシンプルですが語りたいことだけを表現していて伝わり易いし、ゲームとしても気付きの快感が起こり続けて気持ちいい。もっとずっと遊んでいたいのに終わってしまって悲しい。