GarbageCompany

満つらざるとも屈せず

十三機兵防衛圏クリア

十三機兵防衛圏、クリア。

 

プレイ時間はクリアまで52時間、クリア後の追加要素を遊んで76時間。難易度は一番上のSTRONG。「クリア後の追加要素を全部遊んだ」と書きたくて頑張ったのですが、50戦やっても終わらなくて流石に調べたら、9999までは確認されてるとのことで流石に断念。

 

本作はヴァニラウェア開発のシミュレーションゲーム。むかしむかしPS4PSVitaのマルチとして制作発表されましたが、その後Vita版がキャンセル。発売されたPS4版の評判の良さにヴァニラウェアファンの私としては大変歯がゆい思いをしましたが、この度待望のスイッチ版が発売され、遂に遊ぶことが出来ました。

 

大枠としては、13人の主人公それぞれの視点からストーリーを追う「追想編」、彼らが人型ロボット"機兵"に乗って侵略者との最終決戦に挑むバトルパート「崩壊編」、ストーリーの再視聴やライブラリを見る「究明編」を行き来し、複雑なストーリーや多数の謎を紐解いていくゲームです。

 

崩壊編

崩壊編では、色々あって侵略してくる怪獣と戦うことになった13人が機兵に乗り込み最終決戦に挑みます。ゲームとしてはリアルタイムシミュレーションになりますが、コマンド選択中は時間が止まるため、それほど急かされる感じはありません。敵は多数ですがこちらの操作ユニットは多くて6体、戦闘時間も殆どのステージで120秒と短く、異様にヒット感のいいエフェクトも相まって「行動時に都度時間が止まるアクションゲーム」みたいな手触りでバリバリ遊べます。

 

機兵は近接向きの第一世代、バランス型の第二世代、遠距離向きの第三世代、サポート型で唯一飛行可能な第四世代に大別され、13人の搭乗機兵はそれぞれ固定となっています。各人の役割は大まかには機兵の世代で分けられますが、同世代機でも専用兵装や個々人の能力によって結構動きが変わってくるため、強化していくと13機はそれぞれかなり個性的な性能になります。特に、超攻撃型のスキルと超強力な近接攻撃"クアッドスパイク"を持っている上に空も飛べる由貴ちゃんと、広範囲高威力貫通付きで低コストの遠隔攻撃"ピアッシングキャノン"を持ってる十郎の二人は本当に頼れる。

 

戦闘に出撃出来るのは6人までなので、じゃぁこの二人は確定で入れておけば…と思ったら、機兵の操縦は脳に負荷がかかるため大体2回出撃すると1回休まないとなりません。戦闘せず全員で休むことも出来ますがそうすると「連戦ボーナス」が途切れてしまい、このボーナスがかなりおいしいため実質休むことは許されず、満遍なく13人を強化してローテーションする必要があります。

 

敵側も近接型、遠隔型、飛行型、自爆する、シールド張る、敵を生み出すなどなどバリエーション豊富。それぞれに合わせて適切な対応が求められるため、こちらも兵装のバリエーションを揃える必要があります。特に特定の敵の持つ"チョバム装甲(小さいダメージを無効化する)"は厄介で、近接最強の第一世代機兵の決め技"デモリッションブレード(小さいダメージを多数重ねる)"が全く通りません。このせいで第一世代は肝心な所で役に立たないイメージが強い。チョバム装甲持ちの敵が、鹵獲された当の第一世代機兵のコピーというのは面白い関係性。

 

戦闘が進む毎に敵の数も強度も増してどんどん手強くなりますが、こちらも報酬のポイントで機兵の強化が可能で、全体を通してこちらの方が僅かに強いというか、こちらは運用次第でかなり無理な押し込みも出来るので、大量に押し寄せる敵を無理矢理食い破って勝つようなバランスとなっています。一番上の難易度であるSTRONGで全Sランク取るまで遊びましたが、いくつか負けはあってもどうしようも無くなるケースは無く、程よい難易度でした。最終盤では強化が行き過ぎてこっちが上回ってたかな。

 

追想

追想編は、各主人公の視点からストーリーを体験するアドベンチャーゲームで、13人の主人公を中心とした多数の人間が絡み合う群像劇となっています。お話は1985年を中心に、前後100年以上の時系列、成長による見た目の変化、同じ見た目だけど異なる名前の人、記憶喪失、記憶操作、幻覚、クローンに時間軸のループまで絡んだ非常に複雑な物。

 

ゲーム性、という程の物は追想編には無く、ゲームオーバーとか選択による分岐も無く、基本的には一本道(x13)のストーリーを読む形となります。まぁ一本道と言っても時間軸が前後左右したり、各主人公のシナリオが相互にロックされていたり、崩壊編を進めないと開かないルートがあったりして、遊んでいるととても一本道には感じませんが。一度見た会話は次からはショートカットされる(一度目は紆余曲折した結論に直接辿り着く)など進行の快適さにも注意が払われていて、フラグ管理の苦労が偲ばれます。

 

特典のシークレットファイルを見ると、当初追想編は主人公毎に異なるゲーム性を付与しようとしていたようで、それぞれに分岐やザッピング、ゲームオーバーも存在していたそう。つまりこの複雑さの上に「街」「428」やろうとしていたわけで、実現したら物凄いことになっただろうけど流石に無理だった様子。

 

これら多様な要素がヴァニラウェアの圧倒的に美しい筆致で描かれます。風景一つ、人物の一動作までもが惹き込まれる美しさです。そうそう、今回機兵を中心に3Dモデル使ってる(ヴァニラウェア初?)んですが、これも描き込まれたイラストと違和感無く調和してて凄まじい。あまりに調和し過ぎててかなり長いこと3Dモデルであることに気付きませんでした。

 

究明編

上述の通り本作のシナリオはそれはもう複雑な物なのですが、最終的に相当すっきりと頭に入ってきます。これは究明編の丁寧な作りがかなり大きいです。

 

究明編はいわゆるライブラリモードという奴で、追想編の最中を含めいつでも見ることが出来ます。内容は各モードの進捗に合わせて随時追加され、かなり細かなワードまで解説されます。テキストの内容が変に持って回った言葉を使わず、「誰が」「どういうつもりで」「何をして」「どうなりました」と全てはっきり書いてくれるのが本当に有難い。また追想編では虫食い、飛び飛びに見ることになるストーリーもここで全て時系列で整理され、人物別での抽出も可能と至れり尽くせり。

 

作中は舞台が限られるため似た背景、シチュエーションが散見されますが、それでもワンカットを見ると「あぁ、あの時のあそこのイベントね」と思い当たるくらい一つ一つのイベントが特徴的で、崩壊編の戦闘前後の会話もクリア後に見返すと人間関係が見えて趣深い。

 

究明編のお陰で人物、思惑、出来事が整理されて頭に収まり、最終的に全体の時系列がかなりすっきりとまとめられることも手伝って、物語の理解と感情移入を大きく手助けしてくれています。事件も解決も感情寄りなのも個人的に非常に好みのシナリオでした。出てくる人はみんな関係者で、なんらかの原因で、なんらかの解決者でもある。クリア後に追加される小さいオマケを含めて「いい物語を読んだ」感が強く、壮大な神話の全てを読み切ったような気持のいい読後感のあるゲームでした。