「やるドラ」ご存知でしょうか?
全編フルアニメーションフルボイス、選択肢によって物語に介入できるという、
アニメをプレイできるというコンセプト(たぶん)で製作されたPSのシリーズです。
PS2でも二作出ていますね。
PSでは四本がリリースされています。製作発表は四本同時に行われましたが、
そのvol.4である雪割の花(以下「雪割」)は当時から異彩を放っていました。
コテコテのアニメ的萌えヒロインを起用し、パンチラ、胸揺れを多用して
ヲタクの心を鷲掴みにしてそのままアイアンクローという前三作に対し、
絵は淡白。シナリオも淡々という雪割は、素人目にもセールスが心配という代物でした。
(実際その通りだったようです)
ヒロイン比較
他所のヒロインがナデシコだったり攻殻機動隊だったりするのに、
何故一人だけ「パトレイバー2 the Movie」なのか。
ちなみに前三作は等しく「記憶喪失のヒロイン(萌えっ娘)を拾って同居」という設定ですが、
雪割では「ヒロインの素性、記憶喪失の理由を知っている」ところが異なります。
※ここより本稿はネタバレアリアリで進行します。
雪割の魅力はやってみないと分かりにくいですが、その魅力の一端でも文章から感じ取って頂きたい。
そしてプレイして頂きたいと願うからです。発売から物凄く時間も経ってますし。
もういないとは思いますが、もしこれから雪割をやる予定のある方はこれ以降読まないことを推奨します。
「坂と、港と、路面電車と北風の街」
北海道のとある町で、このモノローグから悲劇は幕を開けます。
まずは主人公に名前をつけないといけません。
こういうゲームは感情移入が重要ですから本当は本名プレイが望ましいのですが、
このゲームに関してのみ、知人プレイを推奨します。
理由はいくつかありますが、これが自分だと思うと痛すぎるからです。
本稿では主人公を仮に「知之(トモユキ)」とします。
トモユキは大学生。アパートに一人暮らしで、隣の部屋には憧れのOL「桜木花織(カオリ)」が住んでいます。
ですがカオリには既に恋人「伊達昂(タカシ)」がいました。
そんなある日タカシは事故で亡くなってしまいます。
ショックの余り入院し、記憶を閉ざしたカオリはトモユキの事を恋人タカシだと思い込んでしまいます。
さて、あなたならこんなときどうしますか?
トモユキは嘘をつくのが嫌なので正直に教えてあげました。タカシは死んだよと。
するとカオリは屋上へ駆けて行き、ためらわずジャーンプ。
気を取り直して嘘をつき、屋上で会話をしていると抱き付かれます。
あこがれの女性に抱き付かれて戸惑うトモユキ。
ところでトモユキは煙草を吸わないのですが、タカシはヘビースモーカーだったようです。
煙草のニオイがしないことをキッカケに記憶を取り戻したカオリ、ジャーンプ。
…この辺で攻略のヒントを。
えーとですね、まず断っておくこととして、
このゲームはジャンル「やるドラ」となっていますが、本当は「ジャンプアクション」です。
もっと言うと「JumpingFlash!」以来の「飛びゲー」ということになります。
飛ぶのは勿論カオリ。彼女には飛び癖があり、何かと言うと飛んでしまいます。
特に記憶が戻ったときは99%空を飛びます。
ですので、このゲームをやるときには良心を捨ててください。
「こんなことは良くない」とか迷ってはいけません。全身全霊で嘘をついてついてつき通して下さい。
目指せ完全犯罪。
というかこのゲームでは医者でさえ
「今ショックを与えるとよくないから、君はタカシのフリをしてくれ」とか言いますからね。
お医者さんのお墨付き。本名プレイをしているとこの辺で辛くなってきます。
また、「屋上」にも注意してください。
演出として屋上にいるシーンが非常に多いのですが、屋上は死と隣り合わせです。
すぐそこに魅惑のジャンプポイントがある。カオリはチャンスを今か今かと狙っています。
絶対に飛ばせないよう、細心の注意を払って会話してください。
しかしいくら注意を払ったところで、先ほどの煙草の例などはどうしようもないのではないか?
心配御無用。何度かカオリを見送ったところで選択肢が増えます。
これは大学の友人との会話で、「煙草をくれ」と言われ、
「煙草は吸わない」「あげる」「きついぜ、俺のは」から選択するというものです。
タカシはヘビースモーカーですから、当然正解は三番目です。
するとカオリも「タカシのニオイ、懐かしい」と一件落着。完全犯罪に近づきます。
トモユキ、お前は全く酷い奴だぜ。
また、カオリの入院中にカオリの部屋に入るシーンがあるのですが、これも恥ずかしがってはいけません。
カオリの部屋に入っても下着を漁ったりする前にすべきことがあります。
部屋には電話があるのですが、これは必ず処分して下さい。
留守電に知り合いからの連絡が入っており、タカシが死んだという内容が含まれます。
それなら留守電だけ消せばいいじゃないかって?…ふー、甘ぇなぁ。
電話が部屋にあると知人から電話がかかってきて、やはり事実をバラされてしまいます。
カオリと知人との関わりは可能な限り絶ちましょう。
当然カオリはいぶかしみますが、「電話は最初から無かったんだカオリ!僕を信じて!」とトモユキも必死の説得。
ついでに部屋の写真立て(タカシ入り)も処分します。
首尾よく電話を処分したトモユキは周到にも携帯電話を購入してカオリに手渡します。
「これでいつでも連絡が取れるよ」
トモユキ、お前は全く酷い奴だぜ。
その後はタカシの友人「小林勇一(コバヤシ)」、コバヤシの妹でカオリとタカシの友人「小林美雪(ミユキ)」
二人の協力(共犯)を得て危機を切り抜けたり切り抜けられなかったりしながら着々と犯罪は進み、
遂にトモユキはカオリを抱いてしまいます。やっちまった!!
ここまで来たらもう後戻りはできません。
ていうかここまでやっちゃって記憶が戻ったらカオリでなくてもジャンプします。
トモユキ、お前は本当に酷い奴だ。
この辺で、どう考えてもこのゲームにハッピーエンドは無い事が見えてきます。
上記の抱いたの抱かないのという話も、通常なら外れルートでしょうけども、雪割では大正解ですからね。
もう一箇所難しいところをフォローしておきます。
結局カオリにバレてしまい、彼女は得意のジャンプを披露すべく走り出してしまいます。
物語もクライマックス。彼女の行きそうなところに思いを巡らせますが…。
ここでは実は、どこに行ってもカオリはジャンプしてしまいます。
正解は「一度自分の部屋に戻る」分かるか!!
準備を怠ってはいけない、犯罪は周到な準備から始まるということでしょうか。
部屋に戻って今朝咲いたばかりの雪割草を持って出掛けます。
この雪割草は、カオリからトモユキ@タカシへのプレゼント、春を告げる花という重要な意味を持っています。
ラストの(例によって屋上での)説得シーンでも、素で近寄るとジャンプしてしまうカオリも
雪割草を持ったトモユキが「雪割草が…咲いたんです…」と危ない感じで迫ると臆したのかジャンプしません。
このゲームではジャンプする→失敗。ジャンプしない→成功ですから、
相手の状態がどうであれジャンプされなければ成功です。
そうして無事(色んな意味で)春を迎えたトモユキは試験勉強の傍らカオリの入れてくれたコーヒーを飲むのでした…。
めでたしめでたし
どうでしたでしょうか雪割レビュー。完全犯罪はできましたでしょうか。
拙い上に長い文章ですが、雪割の素晴らしさを少しでも伝えられていれば幸いです。
プレステも既に投売り状態になっていますし、こと雪割に関しては人気の無さも手伝ってワゴンセールの常連。
絵が萌えないからと敬遠しないで、犯罪者の気持ちを味わってみては如何でしょうか?