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満つらざるとも屈せず

パラノマサイトクリア

パラノマサイト FILE 23 本所七不思議、クリア。

 

プレイ時間16時間。

 

本作は株式会社ジーン開発のアドベンチャーゲーム。昭和後期の墨田区を舞台に、死人を生き返らせる「蘇りの秘術」を巡る事件を体験します。

 

ゲームとしては、複数の主人公によるザッピング型のノベルゲーム。ザッピング型だと代表的なのは「街」ですが、あそこまで複雑なフラグ管理はしておらず、不正解ルートは大体死ぬことになるため、基本的には一本道のゲームです。360度を見回す探索パートも特徴的。「会話の相手が主人公の後方を指さしたまま固まってしまった」みたいな時に、こちらが能動的に後ろを振り返る必要があり、これが結構怖い。ホラーとは相性のいいシステムと言えます。

 

世界観としては「突然呪いの力に目覚める9人」「呪いの力は『条件を踏んだ他人を呪い殺せる』というもの」「殺した相手からはポイントが手に入り、これを一定量集めると死人を生き返らせる『蘇りの秘術』が発動出来る」という話がベースとなります。呪いやオカルトが飛び交う話は分類するとホラーと言えますが、「目の前の人間が呪いの力を持っているのか?」「持っているとしたらその条件は何なのか?」「どうやって自分の条件を踏ませるか?」という探り合いをする雰囲気はどう見てもスタンド使いのそれで、プレイヤーとしてはジョジョを見ている感覚がありました。どの呪いも決まれば必殺の能力なのですが、作中屈指の強呪詛が序盤で「プレイヤーに」条件バレしたせいで無力化されてしまうのは面白かった。

 

そして何と言っても本作一番の特徴が、キャラクターたちが非常に個性的、魅力的なところ。老若男女沢山の登場人物がいますがどのキャラも本当に生き生きとしていて、ザッピングするたびに「やっぱ今見てるこいつが一番好きだわ」と何度も思ってしまいます。基本的にコンビで行動するのですがどの組の掛け合いもキレッキレで見ていて嬉しくなってしまう。

 

キャラデザ、立ち絵もこれ以上ない会心の仕上がり。本作はスチル(描き込んだ差し込みCG)がほぼ無く立ち絵だけで進行するのですが、絵自体の見た目の良さは勿論、立ち絵のパターンと表情目線差分が物凄い数で、アニメーションするわけじゃないのに非常に生き生きとして見えます。同じ絵でも回す、傾ける、拡大縮小(絵そのままで目元のアップまで寄る)とカット割りを駆使して「演出」していて、とても立ち絵だけとは思えないビジュアルです。「口パクの時に顎も動く」「瞬きの時に眉毛も動く」「目線が動く時に中間がある(右から左に行く時一度真ん中が表示される)」とかこまかーい部分の丁寧な描画が恐らく効いていて、見飽きるということがありません。一番最初の覗き込む葉子の顔で「このゲームは間違いないな」と確信しました。

 

どのキャラもみんな好きだけど、霊能力者だけどオカルトに詳しいことを隠しているつもりのミヲと、目線がヤバ過ぎるマダム、苦労人だけど頑張ってる津詰警部は特に好きかな。がんばれ、国家権力・・・!

 

ストーリーも事件事故、複数の思惑やオカルト、それにメタな部分も含めてよく練り込まれてまとまっていて大体文句無し。展開も二転三転四転五転して、先が気になって一気に遊んでしまいました。とある人物がどうしても死んでしまうのが、仕方ないけど残念と言えば残念かな。

 

あと本作は恐らく予算や納期の関係でボイスを断念したように思うのですが、結果としてはこれがテンポを補強しててよかったと思います。ボイスは臨場感を高める一方で、「全部聞いてるとテンポが悪くなる(特に話し方が遅いキャラで顕著)、途中で打ち切ると中途半端な印象になる、OFFにすると損した気持ちになる」ということで諸刃の剣だと思っていて、本作に関してはこれが無いことでサクサクと読めて快適でした。レイジングループなんかがそうですが、評判が良くて売れたノベルゲーは後からボイスが入ることも多く、しかし本作はボイス無い方がトータルの体験が快適な物になる気がしています。でも喋るミヲを見たい気持ちもあるなぁ。

 

世界観、演出、シナリオ、そして何より力の入りまくったキャラクターにより八方隙が無く、最初から最後までめちゃくちゃ面白かった。「また別のパラノマサイトもお見せしたい」と誰かも言っていましたが、是非次回作も遊びたいです。